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2021-08-04

大内宿での現地調査

勝俣碧です。私は現在、「近い水」が持つ価値について研究しています。今回は、7月13日から19日の1週間、研究対象地の1つである大内宿で現地調査をしてきました。

大内宿は、主屋が屋根の妻を町並みの中心道路に面して建っていて、中心道路の両脇に2本の水路が流れています。

大内宿の街並み

現地調査では、住民の方にとっての水路の役割や価値についてインタビューをさせていただきました。

まず、水道開設前から現在までの水路の使われ方の変遷については、水道開設時、観光地化したタイミングなど、いくつかのターニングポイントを見つけることができました。水道開設前は洗顔、歯磨き、風呂水等の生活用水として全般的に水路の水が使われていましたが、水道が開設された事により、水路の水の役割は野菜を洗う程度になっていきました。重伝地区に選定され、観光地化が進むと共に、水路で野菜やラムネを冷やしたり、イワナの生簀にしたりするようになり、水路が観光としての一つの武器となっていきました。しかし、保健所の指導によりそれもできなくなってしまい、現在では打ち水、花の水やり、消雪程度にしか利用されなくなってしまいました。

打ち水の様子

そこで、水道ができて水路の役割が減ってもなお水路を維持している理由についてお聞きしたところ、役割が減っても生活の一部であり利便性が高いことや景観の一部として大切なものであるということなどを聞くことができました。住民の方にとって水路はあって当たり前の存在であり、全員が大切に思っていることがわかりました。

そのため、水路の維持管理として、月に一回住民の方々が一番上から下まで一斉に川掃除をして水路をきれいに保っています。また、この川掃除以外にも気になった時には各家で自分の家の前の水路を綺麗にしているそうです。このことから、住民の方が水路を綺麗に保ちたいという思いが強く、綺麗な水路を維持することで観光客を魅了したいという思いがあることがわかりました。

川掃除の様子

住民の方にとって水路は、景観上大切なものであると同時に、綺麗な水が流れていることで心が癒されたり浄化されたりするためなくてはならない存在であることがわかりました。水路は住民の方々の心映しであり、綺麗な水路を維持できなくなってしまうとこの村も衰退してしまうのではないかということを聞き、この水路は村全体に影響を及ぼす大切なものなのだと驚きました。他にも伝統文化や景観問題の話など、興味深いお話をたくさん聞くことができました。

今回の調査で聞き取れた情報をしっかりと整理し、水路の持つ価値についてしっかりと分析していきたいです。

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