スラム改善事業の現地調査を通して
ナイロビ滞在2日目に、キベラスラム内のToi Market(トイ・マーケット)、住民主導によるスラム改善事業の成功事例と言われているKambi Moto( カンビ・ モト)を訪問しました。
また、最終日にはキベラスラムで進められているアフォーダブル住宅の建設現場を見学させていただきました。
Toi Market(トイ・マーケット)
トイ・ マーケットは、主に古着や布、郊外から仕入れた野菜が売られており、キベラで生活する人々の活気であふれる場所です。

現地のチェアマンへのヒアリングの中で特に印象的だったことは、住宅が密集していることによる火災の深刻さです。
キベラスラム内は住宅同士が密接して建てられており、一度火災が起こると一気に延焼します。トイ・マーケットもこれまですでに4回の火災に見舞われています。また、道幅が狭く、緊急車両が通れないため、大きな被害にも繋がりやすい構造になっています。
そして、火が燃え広がりやすいという環境を逆手に取り、土地の所有権や利用権を奪うために火災という手段が選ばれ、夜中に放火され、強制的に撤去を余儀なくされるケースも多く発生しています。
話を聞いたトイ・マーケット内の建物には、海外の大学生により提案された住宅の図面が貼られており、世界中の研究者や支援組織がスラム改善に向けた模索を行なっている様子が見受けられました。

Kambi Mot(カンビ・モト)
トイ・ マーケットでのヒアリング後、住民主導によるスラム改善事業の成功例として知られる、「Kambi Mot」(カンビ・モト)を訪問しました。

カンビ・モトでは、立ち退きの脅威に対抗したこの地域に元々住む住民組織である「ムンガノ」が主体となり、独自の住宅開発を行いました。
ケニアでの土地の所有方法には、①政府が所有、②共同で所有、③私有という3つの方法があります。そのなかでも、カンビ・モトは①の「政府が所有」という方法が取られています。
住宅開発を行うにあたり、ナイロビ市議会と交渉を行い、MOU(覚書)を締結することで建設をスタートすることができました。
カンビ・モトの住宅には大きく3つの特徴があります。
1つ目は、住民がお金を出し合い作り上げているという点です。
少しずつ住民からの集金を行い、資金を確保しました。途中でもともと2つ持っていた区画のうち1つを使うことができなくなってしまったため、別の村に移動せざるを得ない人が出るなどのトラブルもありましたが、移住先で住宅を確保できるよう、それまで集めたお金を返金する対応をとりました。
2つ目は、セルフビルドと段階的建設(インクリメンタル)という点です。
外部からの技術支援を受けながら、住民自らがプレキャストコンクリートの梁や壁を制作し、建築を進めました。毎日10〜20人ほどで作業を進め、業務をローテーションすることで、建設コストを抑える工夫をしました。
また、カンビモトでは、最初から完璧な家を作り上げるのではなく、徐々に4階まで上に増築できる方式をとっています。資金が貯まり材料を調達できるようになった段階で建物を積み上げていくことができるため、個人の資金力に合わせて無理のないペースで住宅を完成させることが出来ます。また、自分たちが使わない部分を貸家・貸店舗 として人に貸し出すことも可能にしています。
3つ目は、全住戸が接地しているという点です。
すべての住戸が接地しているため、ここに住む全ての住人が商売を営むことが出来ます。
実際にカンビ・モトを見学させてもらうと、各住戸がカラフルに仕上げられ、螺旋階段やバルコニーを自ら整えたりと、住民の自己表現と活気が空間に表れていました。

(川島)
キベラスラムのアフォーダブル住宅
最終日はキベラスラムに縁のある方々の案内のもと、キベラスラムで建設中のアフォーダブル住宅の見学をさせていただきました。
キベラスラムでは現在10以上のアフォーダブル住宅計画が行われているそうです。私たちが見学させていただいたプロジェクトは、11階建てのRC造の高層共同住宅でした。EVが完備されており、階段にも十分なスペースが確保されていました。室内環境は私たち日本人にも馴染みがある様な清潔感のあるワンルームで、全ての部屋に十分な開口の設置がされ、水が行き渡るように設計されていました。それぞれの部屋は長いまっすぐな廊下で繋がっており、住人たちが今後どのように利用していくのか想像しながら見学をしていました。

私たちには整った環境に見える一方で、これまでのスラムの暮らしとの違いに疑問を持つようになりました。計画地以外のスラムの住宅は、ほとんどが平屋で、ブタやニワトリなどの家畜を所有し、地上階があることを生かして商売などを行っていました。計画中の高層住宅では、彼らの生活様式に大きな変化が生まれるのではないでしょうか。
案内をしてくださった建築家の方曰く、実際にそのように問題視する意見もあるとのことでした。商売のしづらさや、部屋同士を繋ぐ廊下など共用スペースの使い方、住宅環境を整える一方でこれまでの暮らしとの間に様々な問題が発生する可能性があるとのことでした。
すでに完成している高層住宅では、5階の廊下でニワトリが飼われているそうです。ただ住人の住まい方は時間とともに建築に馴染んでくるだろうとのことでした。

今回の見学は私たちにとって、住宅のあり方を考え直す機会になりました。土地の奪い合いや道の構成を課題としてもつトイ・マーケット、コミュニティから発生し全ての住戸が接地階を所有する形式のカンビ・モト、高層化されていく多くのプロジェクト。多様な性質と課題を知っていく中で、カンビ・モトは住民自身それぞれの力量に合わせた建設を行っていくという点で、私たちには一つの良い形として映りました。本当の意味でアフォーダブルな住宅とは何か、彼らのニーズの本質は何か、彼らの持続可能なアイデンティティと環境改善のバランスはどうとるべきなのか。さまざまな現状を目にしながら、その複雑さを痛感しました。
(八木)











