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2021-08-31

山形県新庄市での現地調査

神谷憲吾です。私は現在、地方商店街の今後に関する研究をしています。活性化ではなく、街の記憶を残しながら解体していくといった商店街の未来を考えたいと思っています。敷地は山形県新庄市の駅前商店街と南北本町商店街です。今回は、現地調査の報告をさせて頂きたいと思います。

駅前商店街
空き家となった建物

駅前商店街は、新庄駅の発達とともに発展してきましたが、車が普及し始めたことや広い駐車場がある大型スーパーマーケットの進出をきっかけに衰退の一途をたどっています。平日の昼間はほとんど人通りがなく、シャッターの閉まった店が目立ちました。

南北本町商店街
閉店しシャッターの閉まった店舗

こちらは南北本町商店街です。駅前商店街とは垂直にクロスしています。この商店街は江戸時代からの城下町で、区画がうなぎの寝床のようになっているのが特徴です。しかし、現在では駅前と同様に人通りは少なく、寂しい雰囲気があります。以前はアーケードがかかっており、雨や雪でも買い物を楽しめるのが強みでもあったのですが、老朽化や維持費の問題で現在は北本町商店街でしか残されていません。

壁面に残る解体された建物の痕跡(駅前商店街)
建物が解体されたことでできた空地(南北本町商店街)

調査を進める中で、解体された建物の痕跡を感じ取れるものを見つけました。高密度の商店街であったため、隣り合う建物同士が一体化している場所が多く、この建物には昔建っていた建物の跡が残っています。街の記憶を残していくためのヒントになりそうだと思いました。

また南北本町商店街の建物が解体された跡地は、アーケードが緩やかな境界線の役割を果たしており、小さな箱庭のような印象を受けました。現在では空地のほとんどが駐車場になっていますが、別の役割もあると思いました。

今回の現地調査を通じて、住民やお客さん、街自体の思い出が詰まった場所を解体するということは悲しいイメージがありますが、解体していくことで見える魅力もあるということが分かりました。また、この通りはユネスコ無形文化遺産の新庄まつりの会場にもなっているため、そういった文化も絡めながら、設計の中で「解体過程のデザイン」ができればと思っています。

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