山王祭の御仮屋(仮建築)に関するフィールド調査
学部4年の根本です。2年に1度開催される「山王祭」にあわせ、氏子地域である番町・麹西・上町東部・九段二ヶ町エリアの計17町会を対象に、卒業論文のためのフィールド調査を実施しました。今年は6月7日〜17日に祭事が執り行われ、準備期間の5月30日・31日・6月6日、および祭事期間の6月9日・11日〜13日にかけて、各町会の御仮屋や神酒所を巡りました。
九段4丁目町会の御仮屋製作現場


5月30日・31日、および6月6日の3日間にわたり市ヶ谷スクエアビル1階にて製作された、九段四丁目町会の御仮屋・神酒所(獅子頭)・山車小屋の制作現場のフィールド調査・見学を実施しました。事前調査や町鳶の方へのインタビューを重ねて臨んだ現場見学でしたが、実際に御仮屋が立ち上がる過程を間近で観察できたことは、非常に貴重な経験となりました。九段四丁目町会の御仮屋は、「御仮屋」「神酒所(獅子頭)」「山車小屋」の3つが揃った、山王祭の中でも非常に豪華な「フルセット型」で構成されています。他町会は既製のパイプテントを用いて空間を構成していましたが、九段4丁目町会は町鳶の伝統的な技法を用いて組み上げられていました。
この現場作業を担っていたのは、わずか5名の職人の方々でした。驚くべきことに、施工にあたって設計図やマニュアルの類は一切存在せず、2年に1度という頻度でありながら、すべて職人の記憶と勘だけで手際よくテキパキと建てられていきました。通常は2日間で一気に完成させますが、今回は台風の接近に伴い、30・31日の段階ではあえて屋根を葺かず骨組みの状態で留める判断がなされました。その後、6日に屋根葺きと装飾を施すという、臨機応変な現場の対応力を目の当たりにしました。

実際に製作現場を見て、写真には残りますが、図面やマニュアルとして残らないからこそ、町鳶の技術の継承が途絶えてしまったら御仮屋の文化も滅んでしまいます。だからこそ今回の卒業論文では、建築的な視点から記録し、図面におこすことの重要性を身に沁みた調査となりました。
各町会の祭事空間のための仮建築のフィールド調査


山王祭の期間中(6月9日・11日〜13日)、麹町・番町・九段エリアの17町会に設置された神酒所や御仮屋などの仮設建築(祭事空間)を巡り、その実態を調査しました。高層化、高密化が進む都心において、各町会がどのように伝統的な祭事空間を作り出しているのか、限られた土地に対してどうアプローチしているのか、各町会ごとに工夫が施されていました。過半数の町会がオフィスビルに設置し、建物ピロティや公開空地、駐車場などを一時的に借用して設置しています。巡行路沿いに公園を有する町会では豊かな空間展開が見られる一方、敷地に余裕のない町会では歩道や私道などの道路空間を工夫して活用するなど、高密度な都心ならではの空間活用の多様性が窺えました。
今回のフィールド調査で得られた仮建築の空間構成や手法のアーカイブ化をさらに深めるとともに、変容する都市と地域コミュニティの中で、祭礼文化と仮建築について考察を進めて、卒業論文に取り組みたいと思っています。











