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2021-12-19

釜石市両石町での現地調査

11月3日から1週間、岩手県釜石市両石町へ3回目の現地調査に行きました。今回は9名の漁師の方にインタビューを行いました。

前回の調査から、漁師小屋の移動を繰り返しながら復興事業が行われてきたことが分かっています。今回は、その移転先の土地の種類、復興庁のテントや自力で整備した漁師小屋の使われ方、漁業形態による漁師小屋の整備状況について詳しくお話を伺いました。インタビューの他に、井本先生や3年生の協力のもと漁師小屋の実測調査も行いました。

実際に話を聞いてみると、復興庁のテントの設置状況は、岸壁の工事状況の他に漁業形態によって違うことが分かりました。当時はホタテの養殖をしている漁師は、復興庁によるテントが優先的に配分され海岸沿いに設置することができたようです。一方で当時ホタテの養殖を行っていなかった人は、テントの配分が遅くなる分、自分たちの土地に設置する必要がありました。それに加えて、漁業の復旧につれて増える漁具や収穫量に伴い、自力で漁師小屋の整備を行っていたようでした。

そして現在は、港側にある漁師小屋の他に、市の土地や漁協の土地、個人の土地に設置された漁師小屋が集落内に点在しています。中でも、自分の土地に設置している漁師小屋には生活や趣味のための使いこなしが見られました。
また、港側の漁師小屋周辺にも自力整備による作業場が見受けられ、特に印象に残ったのは「海岸沿いに単管パイプを組み立てるのは本当は駄目なんだろうけど、こうやって自分たちのやりやすいように工夫して漁をやっていかないと。生活がかかっているんだから。」という漁師の言葉でした。現地でのインタビューから知り得た再編プロセスを通して、漁師小屋の持つ意味というものを改めて考えさせられました。

先日行われた合同ゼミにて他研究室の教授から、「ポータブルなところが漁師小屋の良さでもあり、面白さでもある。移動の事実だけでなく、その先の理由や設置場所など都市計画と紐づけていくと良い」というお言葉をいただきました。復興事業で漁師小屋が受けた影響という観点で調査を行っていましたが、漁師小屋の良いところを建築的な観点で調査する上で大変参考になりました。

今までの調査結果や頂いたアドバイスをもとに、卒業論文に向けて集めたデータを分かりやすくまとめていきたいと考えています。
最後に、インタビューや案内を引き受けてくださった地域の皆様、ありがとうございました。
(水越)

復興庁のテントを実測している3年生
単管パイプで組み立てられた海岸沿いにある作業場
(ブルーシートの屋根がかけられるようになっている)
復興庁によるテント内の様子
(このテントでは、漁師の方から珈琲を頂きながらインタビューを行いました)
釜石市の土地にある、自力で整備した漁師小屋
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